雲石「国語」の会

山陰の教員が国語のことについて学び合う“雲石「国語」の会”のブログです。例会のお知らせや山陰の教育に関する情報のお知らせをしています。

8月例会が開催されました

  • 喜多川昭博「自分を見つめなおして」(小学校6年)

 光村図書の6年生教材「自分を見つめなおして」について、実践報告がありました。「書くこと」の随筆教材です。
 随筆のモデルとして提示されている中川利枝子さんの「ふわふわの雪」の段落構造や、子どもたちが朝読書の時間などで日常的に親しんでいるさくらももこさんのエッセイなどを参考にしながら、自分の経験を言葉で表現し、それぞれの意味付けを行っていく実践でした。
 報告後には、次のようなことが議論になりました。

  • この学習において子どもたちが身に着けた「力」とは何だろうか。
  • 「取材」に関する態度が通常の「生活文」とは異なってくるのではないか。そしてそれは生活文にもフィードバックする部分があるのではないか。
  • 通常の生活文は友だちが読むことを想定していないが、随筆の場合にはそれを想定する。(随筆を書き終えたあとは、それぞれの机に「随筆」と「A4の紙(感想記入用)」を置き、自由に動き回って読み合いを行ったそうです)
  • 物語の場合には、多くの子どもが先行的に物語に触れ、物語イメージを持っているが、随筆の場合には、親しみのない子もおり、先行する随筆イメージ(エッセイイメージ)がない場合も多い。とすれば、記述に入る前に、もう少し随筆に触れる時間が必要だったのではないか。(そのとき参考になる随筆にはどのようなものがあるだろうか?)
  • このような実践が、中学校以降の「書くこと」にどのようにつながるかを考えてみたい。

 随筆を「書く」という言語活動は、新しい学習指導要領から導入され、まだまだ研究が不足している部分です。今回の報告から、「書くこと」の系統や、「読むこと」との関連の中で、どのように「随筆」を書くという活動を位置づけていくか、ということへの論点が開けたように思います。

  • 清水香織「1年1学期の算数は国語」(小学校1年)

 1年生1学期の算数について、特に言葉の面と、「いくつといくつ」と「たしざんひきざん」への変換について報告がありました。
 「いろいろなかたち」という単元では、子どもたちがさまざまな形をした「箱」をどのようにラベリングして仲間分けしたか、という点に注目した分析が行われました。たとえば、「コアラのマーチ」については「六角形がた」や「おみくじがた」と名付けたり、「じゃがりこ」には「うえふとまるがた」と名付けたり、といったことです。
 このとき、「六角形って何?」というある児童の疑問に対して、他の児童が「がったんがったんが6個あるでしょ」と回しながら示すなど、持っている語彙を使いながら、その教室で通じていく共通の言葉が生まれているところが印象的です。「チップスター」と「じゃがりこ」を比較するときにも、「まっすぐ回らない」ということが二つを分ける観点として共通の言葉になり、その区別のために形状に注目して「うえふとまるがた」という言葉が生まれました。
 これは算数の学習ではありますが、言葉によって世界を整理していく、という点では紛れもなく国語の学習でもあります。言葉を持った子どもたちが世界を分ける(=分かる)ことを、友だちと協働しながら行っていく学習の報告でした。

(報告:冨安慎吾)